このとき彼女の目を始めて見つめた。
どちらかというと人付き合いが苦手で、人と目を合わせることが苦手だった俺。
「どうしたの?」と彼女。「イヤ、何でもないっす」とできるだけ平常心を装う俺。
「あの、そろそろ引き返そうか?」本当はもっとこうしていたいのに、その気持ちとは違った言葉が出てくる。
なんで、いつも俺はこうなんだ!?
その後も数回このようなことが続いていたが、そのほとんどが彼女からの誘いだった。そして、
初めて手をつないだのも彼女の方からだった。
バイクに乗り、少し世間からズレていて、半ば投げやりになっていた俺。自分の生活スタイルを変えることを恐れていたはずの
俺の心を、いとも簡単に引き込んでしまった彼女という女性。
本気で好きになってしまうかもしれないと戸惑いを覚えた頃。
「次会うときは、一緒にお酒でも飲もうよ家行っていい?」
彼女は美人と言えるような感じじゃない。そう、犬に例えるなら柴犬といったところか。
感情に裏表のない、誠実でまじめで、快活で、そしていつも主人の行動や仕草を好奇心のある眼差しで見つめているような。そんな感じだ。
俺の話に笑い、そして驚く。一緒にいて気持ちよいと感じ始めた頃には、彼女の目を見て話している自分がいた。
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